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ハンダゴテの選び方(日本はんだ付け協会の場合)

日本はんだ付け協会では、主にハンダゴテを使ったはんだ付け技術を通して、人材を育成し、はんだ付けに対するイメージを変えつつ認知を広めることを目的としています。
そこで、まずは、ハンダゴテの正しい選び方について解説します。

下の写真は、現在市販されているハンダゴテの例です。

はんだコテセット

はんだ付け職人のハンダゴテセット

はんだ付け協会に寄せられる「はんだ付けが上手にできない!」という相談の大半は、ハンダゴテ選び、コテ先選びが誤っていることが原因です。

※コテ先選びについては、下記のページが詳しいです。

  https://handa-npo.com/knowledge04
  https://godhanda.co.jp/blog/kisokouza10/

2021年現在、企業さんへ出張講習に行くと、現在でもコテ先温度をコントロールできないニクロムヒーター式や、セラミックヒーターのハンダゴテを使用されている場面に 出くわします。
理由を尋ねると「予算が無かったから・・」「昔からこれを使っているから・・」「ホームセンターにあったから・・」といったものが多いです。
はんだ付けの品質を直接左右する道具であるハンダゴテなのに、予算を確保しないということは、ハンダゴテの重要性が理解されていないということです。

日本を代表するような大学や、最新の設備を備えたメーカーでも上記のようなことが少なからず起こります。(むしろ多数派です)
残念ながら、こうした旧式のハンダゴテでは、現在のように小型化、密集化した電子部品を正常にはんだ付けすることはできません。
というのも、こうした旧式のハンダゴテは、コテ先温度がヒーターの最大出力まで上がってしまうからです。

先日の講習会でもいろいろなハンダゴテのコテ先温度を実測したのですが、なんと550℃の温度を叩きだしたすごいハンダゴテもありました。
こういうハンダゴテは、電源を入れた時点で、既にコテ先が赤や紫、黒の酸化膜に覆われており、ハンダを弾くばかりでなく、一瞬でフラックスが蒸発して焼けてしまうため まともなハンダ付けはできません。

はんだ付け接合に不可欠な良好な合金層を作り出すことができません。

実は一般の人は、目にする機会が無いと思いますが、ハンダゴテメーカーは、 実にたくさんのハンダゴテを開発しています。(日本では、HAKKO、GOOT、BONKOTEなどの代表的なメーカーがあります)
本来、自分のハンダ付けの用途、対象物に合わせてハンダゴテを選定し、さらに、コテ先の形状を選んでいくのが正しいありかたです。
ところが現状は、こうした選び方をできる人・・というのは、かなり少なくて、たいていは、

 1:ホームセンターに並んでいる中から、良さそうなものを選ぶ
 2:工具屋さんや商社さんに勧められるまま
 3:お客さんが指定している(お客さんも実はわかっていないことが多い)

・・のが実情です。

こうした環境に置かれているハンダ付け業界の根本的な原因は、「はんだ付けに対する正しい知識」の啓蒙不足にある。 と協会では考えています。

世の中のハンダ付け教育の内容は30~40年前からほとんど変わっていません。
このため、せっかくハンダゴテメーカーが、いいハンダゴテを作って店頭に並べても、お客さんに「良いハンダゴテ」に対する知識が無いために安いハンダゴテしか売れません。
電機・電子機器製造メーカーへ売り込むわけですが、商社マンには、ハンダ付けに対する教育は行われていませんので、販売の際にハンダ付けの本質的な話をすることはほとんどありません。

また、最近では電機・電子機器製造メーカーでもハンダ付けに対する教育が行われている所は少ないです。
さらに、学校教育の場では「ハンダ付けとはなんぞや?」ということを教えてくれるところはほとんどありません。
(先生方自身も勉強する機会がありません。)

※エレクトロニクスの業界では、エレクトロニクスに不可欠なはんだ付け技術の勉強が
 大学、専門学校、工業高校などで行われないのはおかしいのではないか?
 という声が上がり始めました。

ハンダゴテはこの数年で大きく進化しています。
昔のように部品が大きくて、金物端子が主流だった時代は、はんだ付け部は電流が流れれば、なんとかなりましたが、現在のように、高機能で部品が小型化し密集した上、熱に弱い電子部品などが使われている基板相手では昔のハンダゴテを使うのは無理があります。

協会では「温度調節機能つきのハンダゴテ」を選ぶように指導しています。
そして、コテ先温度は340℃程度に調整するように推奨しています。

最近の基板と電子部品は前述のように変化してきており電子部品と基板の熱容量の差が極端に大きくなっています。
多層基板で、はんだ付け部の温度を250℃まで上げるためには、ハンダゴテとコテ先の選択がもの凄く重要になってきます。
まして、部品が小さくてコテ先との接触面積が小さくなってますから、なおさら、条件は悪くなっています。

※現在ではamazonなどの通販でかなり安くハンダゴテが販売されるようになりました。
 しかし、実際に購入してみると、残念ながら温調付きというのは形だけで、実際にはんだ付けするには
 不向きなハンダゴテも多々あります。
 現在は、玉石混合状態なので、選ぶのが非常に難しい状況です。
 それでも、温調無しから比較するとはんだ付けしやすいのは確かなので評価は高くなる
 傾向にあります。
 しかし、本当に良いハンダゴテは、劇的にはんだ付け性を向上します。

★一般の方が、趣味でハンダ付けされる場合ならベースとなるハンダゴテは
このクラスのもので十分であると考えています。


温調付き、コストパフォーマンスの高い、 初心者用ハンダゴテセット

※NPOは物販を行っておりませんのでゴッドはんだ株式会社さんへリンクを飛ばしています

また、はんだ付けの対象物によってコテ先を交換するために、交換用のコテ先のことを考慮して購入先やメーカーを選択する必要があります。
というのも、ハンダゴテ本体を店頭やWEBSHOPで安く購入できたとしても、交換用のコテ先や保守部品が手に入れられないようでは、ハンダゴテの能力を10%も引き出すことはできないからです。

2021年現在、日本製のハンダゴテのお薦めは、コテ先交換が簡単で、パワーもあり、価格的にもコストパフォーマンスが高い、GOOT製のRX-802ASだと考えています。
(電源ON後、約6秒で350℃に到達します)


※RX-802AS(goot製)

このハンダゴテ、iphoneの製造ラインにも導入されており、スティーブ・ジョブズが絶賛したという逸話があります。

※あくまでも2021年現在ですので、また各社新製品を投入されると思います。 その時は、記事を更新します。

はんだ付けアートはんだ付け検定 認定者在籍マークは、はんだ付け検定合格者が在籍しており、はんだ付け作業に従事していることを当協会が認定したことを示すマークです。


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