はんだ付けに光を! 現在のスルーホール製造工程(2019.9.12)
こんにちは、はんだ付け職人です。
先日のメルマガでスルーホールのコーナークラックの話をさせていただきましたが、
その中で、
「近年、IPC規格,JIS規格で、スルーホールのはんだ上がりが
100%充填から→75%→50%と緩和されてきたのは、
基板の製造方法が変わって、コーナークラックの危険性が減少したのか?」
という疑問を投げかけたところ、ペンネーム「昔のはんだ付け職人」様から
DMをいただきましたので紹介させていただきます。
********ここからはメールの内容を引用させていただいてます**********
その昔は、ドリリングでスルーホールを開けて、内部に無電解メッキで銅をつけてそ
れを足掛かりに電解メッキで膜厚形成していました。
当然、穴の端部の幕底部分には元からの銅箔とエッチング層の継ぎ目があります。
そのままではエッチングできないので穴をテント上のもので塞ぐか内部に樹脂を入れ
て保護します。
そしてエッチング後、樹脂を除去します。エッチング液から銅パターンを保護してい
るのは薄い樹脂幕の接着力のみです。
21世紀初頭ぐらいからパターンが精細・多層化して製法が徐々に変わってきたように
思います。
両面基板にドリリングしてスルホール内のメッキ前に回路パターンをエッチングで作っ
てしまいます。このときスルーホールにはレジストフィルムのテントを張って内部に
エッチング液が流入しないようにします。この時のパターンはネガ像です。
フィルム露光現像が終わったら、電解銅メッキを行います。これでスルホール内部と
パターン面は一体形成の銅箔が出来上がります。
さらにこの上にある金属の薄膜をメッキします。メッキが終わったらレジストフィル
ムを剥離します。
銅箔の上に別の金属が残ったままのパターンが出来上がるのでこの金属だけ溶かす
と、スルホール基板が出来上がります。
スルーホールの銅箔は、パターン部分と同時に電解メッキをされていますので端部も
膜厚は薄くなりますが、別工程よりは密着度は高くなります。
前者の方法はかなり歴史が古く工程も簡略なのですが、エッジ部分の弱点はありまし
た。ただ、リード付き部品が多かったので そのリードのスルホールに充分ハンダを入
れることで補っていました。そもそも単なる両面基板の穴にハト目を打ってはんだ付
けを裏表に行い接続していたことも…大昔です。
チップ部品が増えてスルホールがビアホールになり、単なる穴になってからは前者の
方法はクラックの危険をはらんでいます。
後者の方法は、より安全ですが、工程が多い分コストアップになります。
お隣の国でプリント基板(生板)を製造するとどういうことが起こるのかは
ご想像ください。
************ここまで******************************************
やはり、本が出版されてからの20年間でスルーホールのコーナークラック対策が
取られていたようです。
しかし、古い基板の故障の場合は、コーナークラックの可能性を否定できませんし、
コストを抑えるために昔の工法で製造された基板が流通している場合は、
現在でもコーナークラック発生の可能性があります。
(見た目に判断できないだけにやっかいです)
知識として頭の片隅に置いておいた方が良さそうです。
「昔のはんだ付け職人」様ありがとうございました。
お役に立てば幸いです。
では、明るいはんだ付けを!